定価:1,400円+税
ISBN:978-4-86324-118-3
好きな地域の関係人口になりたくなる度 :★★★★★
地域で何かチャレンジできるものがないか考える度 :★★★★★
本邦初の「ローカルジャーナリスト」である田中輝美氏による本書は、「関係人口」ブームの火付け役となった本です。
「誰も名乗っていないから」という理由により、「ローカルジャーナリスト」を自ら名乗る彼女が、自分ブランドを築いていく過程にも興味を惹かれます。
ですが、ここでは、本書のメインテーマである「関係人口」について私なりに理解したところを整理してみました。
好きで応援したい地域(まち)がある。
でも移住となるとハードルが高く感じるという方に、「関係人口」入門編としてオススメです。
本書を読んで、地域への関わり方に答えが見つかるかもしれません。
◆定住人口と交流人口の間の「関係人口」
まず、関係人口と似ているなと思った「ファン」との違いについて考えてみました。
あるものが好きという点は同じです。
好きのレベルや行動の段階がいくつもあることや、人によって関わり方が多様なところも一緒だと思います。
違うのは、ファンがある分野の中で好きなもの、例えばプロ野球のうち阪神が好きだったりすると、他のチームに対してはしばしば排他的になる(いわゆるアンチが発生する)ことがある。
また、チームが負け続けることに腹を立て、失望すると野次や中傷など、好きなはずのものに対してマイナスの行動をとることもあるということではないでしょうか。
それに比べて関係人口の場合、好きな地域やまちは一つでなくてもよい。
このことは関係人口によるインパクトの大きさを考えるときに重要な特徴です。
都道府県、市区町村、もっと小さな特定の範囲のまちなど、好きな地域をいくつも自分の中で共存させ
ることができます。
また、当然ながら時と場合によってどの地域の応援をするかも変わってきますが、どこかの地域に対してアンチになることは基本的にはないかと思います。
(基本的にといったのは、ありえるとすれば、ローカルを愛することにより「大都市の象徴としての東京」に対するアンチはありえるかもしれません。)
次に、本書を読んで、以下の3つのキーワードから、関係人口であることの重要性を考えてみました。
それは「よそ者」、「自分ごと」、「社会的インパクト」の3つです。
◆他所者の視点
本書で紹介されている、地域で活躍している人たちが総じて他所者の目を持っているところは予想どおりでしたが、内容は非常に興味深かったです。
著者も含め、一度は東京に出て故郷が恋しくなった、故郷のために何かしたいと思っていた人たち。
それに、東京圏に生まれ育ち、いわゆるふるさとや田舎を持たないことによる地方への憧れ、東京に疲れてしまったことによる自己回帰としての地方でのチャレンジ意欲を持つ人たちであったと感じます。
だからこそ地域の魅力を客観的に見られるのではないかと思います。
一方で、客観的なようで自然豊かな地域への憧れというフィルターによって実際の姿とは必ずしも一致しない地域の姿が描かれるおそれがあります。
しかしながらそれは決してマイナスではなく、他者が描く理想像と地域の実際の姿のギャップの中に、地域の課題が顕在化され、取り組むべき方向が見えるというメリットもあるのではないでしょうか。
いずれにしても地域の中にいては気づかないことを、他所者の目で見てもらうことのメリットは絶対的に大きいと思いました。
◆自分ごととして考える
人口という分母に「あなたをのせる」という言葉にぶるっときました。
都会、特に東京は人か多すぎる。
東京などの大都市では、個性はしばしば埋もれ、自分が匿名であるかの錯覚を受けることがあります。
あるいは自分に価値がない、無力であると劣等感やコンプレックスを抱き、自己を過小評価しがちです。
ベンチャー企業経営者のように確固たる自分の世界と軸を持つ人(ホリエモンさんなど)以外、多くの人はそうではないでしょうか。
そんなとき、関心のあるまちの人口に自分をのせてみる。
すると人口では圧倒的に東京に劣る地域の人口が、自分をのせることで逆転するのです。
(たとえば、「1億2000万人>1万人」が、「1/1億2000万人<1/1万人」になる。)
自分がいる地域での密度が濃くなるのです。
この発想は素晴らしいと思いました。
◆社会的インパクト
東京は人やサービスや商品にあふれ、人、情報、モノの個性が埋没していますが、地域ではその一つ一つがくっきり鮮やかな輪郭で縁どられていることが多いです。
関係人口は、時に地域にはなかった新たなサービスや商品がもたらします。
それも関係人口による社会的インパクトといえます。
また、東京では埋もれて匿名だった人が、地域ではチャレンジする余地が大きい。
そのため、企業の単なる雇われ人ではなく、自分の名前でチャレンジができるのではないかと思います。
それは地域にとっても、自分にとってもインパクトになりえるのです。
さらに、何より関係人口によるインパクトは、総人口に制約されることがありません。
最初に書いたように、一人が複数の地域で関係人口になることが可能だからです。
本書にはこのことは明確には書かれていませんが、関係人口を増やすことを目指すことの最大の利点はこれではないかと思いました。
つまり一人が関係する地域が多いほど、日本全体の関係人口の合計は比例して増えていくのです。
それによって1億2000万人の人口が、10億にも100億にもなりえるのです。
定住人口を奪い合うゼロサムゲームではなく、日本のそれぞれの地域がともに高まっていける可能性があります。
もちろん地域の努力なしには成り立ちませんが、それが実現できれば人口減による市場の縮小などおそれることなく、市場を拡大しつづける道が拓かれるのではないでしょうか。
そういう意味で、関係人口を増やす取り組みはまだまだ始まったばかりで、この先多くの可能性が秘められていると期待しています。
私はいくつの関係人口になれるかな。
自分にも好きな地域のために何かできることがあるのではないかと考えてみたくなる本です。









