80対20の法則を覆す ロングテールの法則
菅谷 義博
東洋経済新報社
2006-02-24


パレートの法則の否定ではなく、ロングテールの法則もあるよ度 : ★★★★★




 「売上の8割は2割の優良顧客が生み出す」というパレートの法則は、私でも知っているくらいあまりに有名です。

著者はこのパレートの法則にある疑問を投げかけます。

「なぜ8割の普通の顧客は切り捨てられているのか?」

その答えは、「コミュニケーションにコストがかかるから」。


しかし、著者は、現代のインターネットを使ったeマーケティングの時代においては、コミュニケーションコストはほぼ「ゼロ」であり、もはや顧客を切り捨てる必要はないといいきります。

現に、Amazonにおいては、在庫できる本が無限に近いため、年に数冊しか売れないような「売れない本」が「売れる本」の売上を上回ってしまうという現象が生じているというのです。


そこで著者が持ち出したのが、いわば逆パレートの法則としての「ロングテールの法則」。

その本質を理解すれば、論理的で再現可能なマーケティング戦略を創り、売上をコントロールなものとすることができるといいます。

本書はAmazonの事例に見られるようなロングテール現象をマーケティング戦略として取り込み、「ロングテール戦略」とするための方法がまとめられています。

それでは、ロングテール戦略とはどのようなものか、それによってどんなことが可能となるのか、本書の内容を整理してみます。


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◆ロングテール戦略とは?

・ロングテール戦略とは、「絞り込まないマーケティング」

・ロングテール戦略を実行する上で最も重要なことは「マーケティングの自動化

・マーケティングを自動化することで、顧客を切り捨てず、捕捉しうるすべての顧客のライフタイム・バリューを追求することが究極の目的

・マーケティングとは「売れる仕組みづくり」のこと



◆全体マーケティングフローの設計

①顧客創造
②育成
③営業
④バックオフィス
⑤生涯顧客化

⇒ 各段階において「うまくいったこと(売れた活動)」と「うまくいかなかったこと(売れなかった活動)」を正確に把握することで、確実に売上を上げることができる仕組みをつくることができる。



◆ロングテール戦略の2つの軸「商品」と「顧客」

・ロングテール戦略の2つの軸は「商品」と「顧客」

・「商品」の場合、在庫と物流の効率化を徹底する必要がある(例:Amazon)

・「顧客」の場合、顧客数を増やすだけでなく「顧客の時間軸」に焦点を当てて、成長に応じた好み、ニーズの変化にアプローチしていくことができる
→「ライフタイム・バリューの向上」のための具体的な方法」


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一言でいうと、ロングテール戦略とは、「マーケティングを自動化することで確実に売上を上げるための仕組み」ということですが、必ずしもIT化でなく、「仕組み化」するという視点が重要だと思いました。

また、よく「ターゲットは絞れ」といいますが、絞った後の「顧客の時間軸」のことについてはこれまで考えが及んでいなかったところです。


仮にターゲットを「東京でサラリーマンをしている30代半ばの男性」に決めたとしても、その人はいつまでも30代半ばでいることはないんですよね。

そのとき、ターゲットはそのままに新たな顧客を獲得するのか、その顧客を長く捕まえるのかでも事業のやり方は当然異なります。



本格的にビジネスを動かしているという段階には程遠く、起業を目指しているに過ぎない私ですが、ロングテール法則は逆パレートの法則とはいいつつも、両者は必ずしも相容れないというものではなく、うまく組み合わせることで、売上の自動化、効率化、最大化を図っていけるのではないかと感じました。