【地域への圧倒的な熱量と行動力、地域が持つビジネスの可能性に胸が熱くなる1冊】


ローカルベンチャーとは、地域の宝物を自分なりの視点で見つけ、地域でビジネスを起こす。そして起業家たちが増え、お互いに関連を持ちながら、その地域の経済を成り立たせていく事業のことです。

本書の著者である牧大介氏によって提唱されたものです。



著者の牧大介氏は、自らも岡山県西粟倉村で「西粟倉・森の学校」と「エーゼロ」という2つのローカルベンチャーを手掛けるとともに、ローカルベンチャーの育成にも取り組み、人口約1500人という小さなまちでまさにローカルベンチャーのうねりを巻き起こしています。

地域に関わる上で、著者が抱いてきた、そして今も抱いている最も大きな問題意識は、「地域にはプレイヤーが足りない」ということ。

人やお金などを実際に動かさないと何も地域は変わらないし、地域でプレイヤーが増えないと社会を変えていくことはできないと著者はいいます。

そして、「仕事がないんだったら、仕事をつくる人がいたらいい・・・分厚い報告書をつくることよりも、そういう人が1人でも地域にいることのほうが、きっと意味がある」と考えるに至り、自らもローカルベンチャーに、そしてローカルベンチャー育成に身を投じてきました。



しかし、そこにある想いは、人口減少や高齢化に苦しむ地域への「あわれみ」からではありません。

著者は、「地域にはビジネスの可能性があふれている」といいます。

本書で述べられているのは、著者が学生時代で経験した地域でのフィールドワークや、西粟倉村での事業活動を通じて確信するに至った、地域に眠るビジネスの可能性についてです。

同時に、知識やスキルを学ぶための単なるノウハウ本ではなく、まちづくりの一実践書として、そして地域に眠る可能性を振り返るきっかけとなる本として、ぜひまちづくりに関わるすべての人に届けたい内容ですね!

特に、地方自治体に勤める公務員は絶対読むべきです笑



以下、本書で私が心惹かれた個所を整理します。


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◆森や木から価値を生み出す「西粟倉・森の学校」の取り組み

〇百年の森構想

・村が掲げた「百年の森構想」
→ 「村の森林は村役場で預かる」、「木材の加工・流通・販売など総合商社としての役割は『西粟倉・森の学校』が担う」、「森林組合は現場の仕事(管理・伐採)を全うする」という地域での役割分担
・村における林業関連の売り上げが、「百年の森構想」を掲げた2008年の約1億円から、10年間で8億円に成長


〇「西粟倉・森の学校」


・ほぼ全員素人からのスタート
・少量多品目の木材加工モデル
・木材の価値を最大限に生かす(森や木に価値を生み出す)
・地域の人が働きやすい職場づくり
→ 家族の予定に合わせて休み、労働時間を自由に調整できる


〇「西粟倉・森の学校」の活動を通じて得た新たな問題意識


・地域全体に多様な価値が眠っているなか、木材や木材製品を売るだけでいいのか
・農業、林業、水産業という枠を超えて、自然資本として価値をつなげていかなければならない
・農業、林業、水産業を横につないで循環させる何かができれば、地域全体の循環が可能になる
・地域での循環が大きくなっていけば、地域経済の自立度も高まっていく
→ 日本の田舎に自立度の高い経済があれば、人が生きていくのを支える基盤になる

→ 地域で多くの価値が埋める仕組みづくりのための2つめのローカルベンチャー「エーゼロ」の展開




◆「地域や社会へさまざまな価値を生み出す土壌になりたい」からはじまった「エーゼロ」の取り組み

①自然資本にまつわる事業

・森林、山、土壌、海、川、大気、生き物などを「自然資本」ととらえ、自然資本が持つ本来の力を引き出し、価値を創造する
・自然資本の中で循環を生み出し、その価値が高まっていく仕組みづくり
・林業と水産業、農業をつなげる第一歩としての「うなぎの養殖」
→ 「西粟倉・森の学校」で捨てられる木くずを燃料に
→ ふん、排水を、肥料として畑に循環させる
→ 農業への循環
・年間通じて作業を平準化するため、冬は鹿やイノシシなどの獣肉加工


②ローカルベンチャースクール

・地域で新たなビジネスを生むためのローカルベンチャー支援
・本当にやりがいをもって挑戦していける状態になるためには、地域の資源や人の可能性を発掘していく作業が不可欠
・「こうすれば評価される」よりも、「自分がこうしたい!」と自分起点であることが大切
→ 口で言っていることが自分の心のピュアな欲求がつながっていないと、事業プランに核にその人がいなくなってしまう
・ローカルベンチャーを育てることを通じて、そこに関わる私たちや地域の人たちも、何かにチャレンジしていくことを学ぶ場になっている
・「ローカルライフラボ」起業予備軍の人たちが、一旦村に住んで、自分自身や地域の可能性を探求する期間を設ける
→ 定住を義務付けない=「関係人口」
・村内で、各分野の最先端の経営者から学ぶ「ローカルモーカル研究会」
・「西粟倉村がすてきになれば、西粟倉村で売っているものは全部買いたくなる」
・お金では買えないストーリーが地域にはある

→ 会社の手段になることなく、その人らしくありたいという生き方を中心に置いて成立するのがローカルベンチャーの魅力


③ふるさと納税・地域商社事業

・地域や自治体のファンづくりを継続的に進める仕組みづくり
・ミッション「関係人口づくり」
・北海道厚真町で展開
・ローカルベンチャーを地域で育てやすくなる土壌をつくることができる


④建築・不動産事業

・「西粟倉・森の学校」と「エーゼロ」で、伐採、製材から住宅の設計、施工、物件管理、入居者募集、移住・起業支援までを一気通貫で実施可能に
・素材とエンドユーザーをどうつなぎ直すか
・地域全体の価値を上げ、住みたい・暮らしたい場所にしていくことが大切
→ 「この地域に住みたい」「ここで挑戦したい」という人が増えると不動産価値が上がる


〇エーゼロが目指すもの


・「地域経済を醸す」(キャッチコピー)
・地域経済をよくするのは、地域全体の売り上げと、地域全体で発生するコスト(外に出ていくお金)の2つを考えればよい。地域から出ていくお金を減らして、生まれる価値の量を上げるだけ
・地域経済が発酵しやすい「地域のスケール」(規模感)がある
→ 大きすぎるとプレーヤーも多くなる
  行政も大きくなり、組織が複雑に
  動かすのに大きなエネルギーが必要



◆地域にローカルベンチャーを増やすために自治体ができること

・民間のプレーヤーを増やすには、まず自治体から始めることが効果的

・自治体職員こそが、真剣に地域住民のこと、地域の未来のことを考え、行動し続けていることが大自

・自治体がローカルベンチャーになることが一番の早道
→ 個人レベルでのプロジェクトの立ち上げやチャレンジ、仮説検証がたくさん出た中で、いい芽が出たらそれを伸ばす自治体組織
→ 「創発型地域経営」

・自治体主導の計画に縛られて結果が出ない「計画にこだわってがっかり」に陥らないよう、「行き当たりばったり」からの「行き当たりばっちり」を目指す

・自分で主体的に行動して、何かを生み出していく「起業家型公務員」がいる地域にこそ、ローカルベンチャーは集まる



◆ローカルベンチャーの目指すもの


・地域には「資本主義」が足りない
→ 「お金なんてどうでもいい」ではなく、しっかり売り上げを伸ばして、生産性を高め、そこそこの給料を出せる会社を地域で増やす

・農山漁村にはまだやれていないことがたくさんあって、チャレンジする前からあきらめているだけ
→ 自分たちの力で地域経済を盛り上げていこうとするベンチャーマインドが必要

「好きだから続けていけるし、好きだから本物になる。本物になるから生き残っていける」(西粟倉村本村長 道上さんの言葉)

・移住者は、何の財産も持たずに、まったく無防備な状態で地域に入っていくことになる
→ 自分の夢は夢としてありながら、気持ちよく地域の人たちに応援してもらえる存在になること
→ まず精一杯自分の夢を追いかけ、「自分を幸せにするために」」地域で生きる、チャレンジする
→ お世話になった人たちへの感謝の気持ちが心の底から湧き上がってきたら、そのときにやっと「地域のために」頑張ればいい

・自分がワクワクするビジネスは、自分のことも、人のことも幸せにできる

・地域にいろいろなベンチャーがあるほど、組み合わせが増え、多様なものがつながり合って多様な価値が生まれる可能性が高まる
→ 「地域にはビジネスの可能性があふれている」

・地域には愛情=ローカルベンチャーの成長を支える大きな応援のエネルギーが眠っている
→ ローカルベンチャーが現れたとき、地域の未来をあきらめたくないたくさんの人が応援してくれる
 その人たちの愛情=エネルギーをいただきながら、成長していくのがローカルベンチャー

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本書には、「地域の無限の可能性」への想いが満ち溢れています。

それにつられてつい長くなってしまいました・・・笑



地域にある豊かな自然は、「自然資本」であるという考え方にまずハッとさせられます。

自然それ自体が生かすべき資源ということですね。

しかもそれが広大に眠っているんです。

でも、あるだけでは何の価値も生み出しません。

やはりそこに人が関わることで、資源に価値を見出し、価値を高めていくことが大切なんですね。



そして地域経済ということを考えたとき、地域で発生する消費をいかに地域内でまかなえるかという視点も勉強になります。

日本全体を考えるとよくわかります。

日本は食料自給率40%といわれますが、これは国内で消費されるもののうち、輸入するものでまかなっているカロリーが60%ということです。

でも実際は国内で生産されているものはもっと多く、それが海外に輸出されていたりします。

なので厳密には食料自給率ではなく、食料の「国内消費率」なんですね。

海外から輸入するのには余計な輸送コスト(お金、エネルギー、時間)がかかりますし、輸出するのにも同じことがいえます。

要するに「無駄」が生じているわけです。(まあ、国の場合は政治的な要素が多分に関係していますが・・・)

地域外から持ってきていたものを地域内で生まれたものに置き換えてみるとどうなるか、地域内で生み出すことはできないだろうか、著者のチャレンジの背景にはそのような発想が常にありました。



そして最後に、「まず精一杯自分の夢を追いかけ、『自分を幸せにするために』地域で生きる、チャレンジすればいい」という言葉。

最初から、「地域のために」というのはウソや無理があるということなんですね。

どうしても気張ってしまって、自分が望まないことをやらざるをえなくなったりする。

そうなると自分も楽しくないし、チャレンジをあきらめたり、地域から出ていったりして結果的に地域のためにもならなくなってしまう。

そうではなく、まず自分が好きなこと、ワクワクすることをやろうというのは非常に勇気が出る言葉です。

「自分がワクワクするビジネスは、自分のことも、人のことも幸せにできる」という発想ですね。

そして何より好きでないことは続かない。

「好きだから続けていけるし、好きだから本物になる。本物になるから生き残っていける」という元村長の言葉は至言だと思いました。




まちづくりに関わる者として、これからの起業を目指している者として、胸熱くなる1冊でした。

大切な1冊となりました。

ありがとうございます!