※写真は、本屋ときがわ町の主宰者ときがわカンパニーさんのホームページから
2020年2月16日(日)の第11回本屋ときがわ町にて、読書会議「関係人口を考える」を開催しました。
課題本は、「関係人口」の火付け役の一人、ローカルジャーナリストの田中輝美さんの著書『関係人口をつくる 定住でも交流でもないローカルイノベーション』。
微妙な天候で集客が危ぶまれましたが、 ときがわ町内外から、なんと11人(ときがわ町、川越市、嵐山町、坂戸市)の方に参加していただきました!
ありがとうございます!!
出身、性別、年齢、職業が異なる多様な方から、多くの意見をうかがうことができました。
今回は、読書会議の様子をかいつまんでご紹介します。
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(1)目的の共有
今回の読書会議の目的は2つ。
①「関係人口」という言葉を知ってもらうこと
②ときがわ町に「関係人口」をつくるには?を一緒に考えること
はじめに確認したところ、「関係人口」という言葉自体を知らない人が大半だったので、まずはこの言葉を知ってもらい、その意味をみんなで考えていくことにします。
『関係人口をつくる』では、「関係人口とは、住んでいなくても、地域に多様に関わる人々=仲間のこと」であるとされています。
ただ、まだまだ定義が明確になっているとはいえません。
たとえば「関係」とは何なのか。
何と何の関係なのか。
ぜひそうしたことを一緒に考えてみたいと思います。
(2)アイスブレイク
参加者の方は、私は知っている方ばかりでしたが、お互いに知らない方もいたので、「①名前、②生まれたところ、③住んでいるところ、④なぜ今の地域を選んだのか」を軽く自己紹介。
お一人を除くほかは全員が、「生まれた地域」と「今住んでいる地域」が違うことが判明。
中には、これまで13回転居したという方も(すごい!)
「このまちに住みたい」と思って選んだ方もいれば、家族の希望で選んだ方や「便利だから」という方もいました。
住む地域の選び方でも、それぞれいろんなストーリーがあっておもしろいですねー。
※写真はときがわカンパニーさんホームページから
(3)「関係人口」を考えてみよう
行政がやっている「移住促進」を考える導入部をはさんで、いよいよ本題の「関係人口」への考えを深めていきます。
先にも述べたように、『関係人口をつくる』では、「関係人口とは、住んでいなくても、地域に多様に関わる人々=仲間のこと」であるとしています。
実際のところ、地域ではどのようなことが起こっているのか。
私から提示させていただいたいくつかの「お題」をもとに、意見交換をしていきました。
◆「関係人口」のイメージ
・地域おこし協力隊は、住民票を移すことが条件になっておりハードルが高い。それがなければやってみたい案件あるのに・・・
・行政が所有するシェアハウスに住むとき、「地域に貢献する意思があるか?」などと聞かれた。人目につきやすい、注目されているというようなニュアンスのことをいわれ、あとからかなりのプレッシャーを感じるようになった
・すごく好きなまちはある。でも家賃が高くてとても住めない。住まなくても、行ったり来たりしているだけで幸せ
・山が見える田舎に住みたいと子どものころから思っていた。企業は損得でやめられるけど、地域はやめられない。利害関係でないぶん、関係が深くなりやすい
・田舎に住むのはキツイ。実は都会好き。人間関係の狭さを露呈・・・
・住むことによって生まれる「しがらみ」がある
⇒ 「住む」と「好き」は別物という視点が見えてきた
⇒ 田舎と都会の違い
◆「関わりたくない地域」ってどんなところ?
・住むと、地域活動(自治会、地域の行事など)あれこれ強制されるようになる
・少なくとも何かを期待される
・規模が大きい、人が多いまちのイベントに出店すると、場違いな感じ。
・生まれたころから長く住んでいると、周りが自分のことを知っている人ばかりで、どこにいくにも気になる
・住む地域と働く地域はわけたいと思っていた
→ 働くうちに、ときがわっていいなと思えるようになった。今は住んでもいいと思う
⇒ 周りの人との関係は大きい
◆「関わりたい地域」ってどんなところ?
・学生時代は都市部に住んでいたが、アパートの隣の部屋に住んでいる人の顔も知らなかった。ときがわ町のシェアハウスに住み、今は町内の別の場所に家を借りて住んでいる
→ ときがわ町は、「顔の見える関係」「ほどよいウェルカム」「ちょうどよさ」があると感じる
・最初は知らなくても、何度も行くうちに知っている人ができて、仲良くなる人できた
◆ときがわ町は「関わりたくないと思うところ」「関わりたいと思うところ」とその理由
【関わりたいと思うところ】
・地域というよりは、特定の場所や人の要素が強い
→ やらせてくれる、関わらせてくれる
・「人」は重要
・それまで知らないまちだった。でもここ(ioffice)を知って、知り合いができた。受け入れてくれると感じる場所
→ いろんなイベントに訪れるようになり、人と話すと、買うつもりのなかったものまで買いたくなる(買ってしまった)
・住んでいる人が、自分のまちを「好き」っていうまち
・おもしろい人がいるかどうか
・ときがわ町や越生町など、秩父の手前の一帯は「環武蔵野文化圏」ともいうべき地域
→ 東京的な感覚を持ちながら、東京では生きづらい人が、秩父まであえて行かずに留まっている地域
・保守的でなく、かつ、革新的すぎないちょうどよさがある
・海の近くがよかったが、夫の希望で住む場所を決めたので最初はあまり地域に関心なかった。しがらみは嫌だけど、知り合いがまったくいないのもつらい
→ いきつけの店ができると、人づてにどんどん人の環が広がっていった
→ 知り合いも近くに住むようになった
・ちょっと知っている、立ち寄れる場所が複数ある、何かあったときにちょっと話せる人が複数いる。=「サードプレイス」
・ときがわと長く関わっていたわけではないが、夫も自分も気に入って住むことに決めた
→ 好きな地域=住んでいる地域
・移住してきたときはそこまで関わりたいと思っていなかったが、自分はよくても子どもたちもいるので最低限の付き合いは必要と思っていた
→ インターネットで地域のことを発信していたら、地域の関係者から連絡があったことで、地域と関わるようになった
→ 地域での役割を与えられた
【関わりたくないと思うところ】
・勢いで同棲したけど、ちょっと戻りたい感覚(シェアハウスに住んで)
・しがらみが強すぎると生きづらい。知っている人ばかりで見はられている気がして、気が滅入る
・地域での役割を与えられた反面、いろいろなことを期待されるようになる
→ ボランティアでは続かない
(4)まとめ
参加者の皆さんとの対話を通じて、関係人口とは何かという明確な定義が生まれたということではありませんが、少なくともいくつかの重要なキーワードが出たように思います。
整理しますと、
・「好きな地域=住みたい地域」では必ずしもない
・強制されない(選ぶのは自分)
・役割が与えられる、関わらせてもらえる(でも選ぶのは自分)
・しがらみは嫌。でも知り合いがまったくいないのも嫌
・ちょっと寄れる、知っている人や場所が複数ある
・サードプレイス
・ほどよいウェルカムさ
もちろん、これらの程度感は人それぞれ違うと思います。
私は、最後は、結局のところ「ジブンゴトの関係がどれだけあるか」ということが重要ではないかと思いました。
ここでいう関係とは、「自分と地域」との関係、ひいては「自分と地域にいる人」との関係のことです。
そして、「地域にいる人」とは、住んでいる人もそうだし、関係人口自身もその中に含まれるのではないかと考えます。
それぞれの人との関わり方はそれこそ人の数だけあって、それだけ地域との関係も多様なものがある。
そして、ありがちな「移住は関係人口のゴール」という議論については、私は明確に「ノー」という
立場です。
移住・定住はあくまで「関係」の一つの形でしかありません。
だから、関係人口が増えること自体は、人口を増やすことと直接関係があるとはいえないのですが、結果的に関係人口が増えればその中から移住する人も出てくるかもしれません。
ただし、あくまで「住む」「住まない」に良い悪いはなく、その人自身の選択によるものでしょう。
そもそも、住んでいる人が「住みたい地域」だと自信を持っていえる地域になっているか。
住んでいる人みんながそう思えるような地域であれば、「ぜひ移住してください」なんていわなくても、来る人みんなが移住したくなるはずですから。
最近考えていた関係人口について、今回はいろんな意見を聴ける貴重な機会となりました。
参加者の皆さん、改めてありがとうございました!
これからも関係人口研究家として、探求を続けていきたいと思います。
次はぜひ、地域に住んでいる人から見た、関係人口との関わりについても考えてみたいですねー