いよいよ最終回となりました。
4回目となる今回は、パネルディスカッション「関係人口をめぐる新しい動き」を取り上げます。
果たして今、「関係人口」そして地域に何が起こっているか、パネリストたちの熱い議論が交わされました。
第1回はこちら。
第2回はこちら。
第3回はこちら。
今回のシンポジウムは、テーマが「関係人口」、そしてコミュニティデザイナーの山崎亮さんや、ソトコト編集長の指出一正さんが登壇するとあっては、もう参加するしかありません!
関係人口は、めちゃくちゃ面白い!
そして、登壇者の人たちの話も面白かった!
ここでは、シンポジウムの内容を私なりにまとめて公開しています。
ボリュームが多いので、全4回の連載でお送りしています。(4回目)
【プログラム】
(1)特別講演「コミュニティデザインと活動人口」 ← 第1回
登壇者:山崎亮 氏(Studio-L代表、コミュニティデザイナー)
(2)基調講演①「関係人口の新傾向」 ← 第2回
登壇者:指出一正 氏(株式会社sotokoto online、ソトコト編集長)
(3)基調講演②「国交省アンケートから見る関係人口」 ← 第3回
登壇者:小田切徳美 氏(明治大学農学部教授)
(4)パネルディスカッション「関係人口をめぐる新しい動き」 ← 第4回(今回はココ。最終回)
コーディネーター:小田切徳美 氏
コメンテーター:山崎亮 氏
パネリスト:指出一正 氏 ほか3名
↓ レポートはここから
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◆パネルディスカッション「関係人口をめぐる新しい動き」
コーディネーター:小田切徳美 氏(明治大学農学部教授)
コメンテーター:山崎亮 氏(Studio-L)
パネリスト:指出一正 氏(株式会社sotokoto online)
関貴之 氏(岩手県八幡平市 企画財政課)
多田朋孔 氏(特定非営利活動法人 地域おこし)
松原佳代 氏(株式会社カヤック Living)
〇関氏(八幡平市の現状と取組)
・人口約26000人。人口減少が深刻(4年間で1000人以上減少)
・移住者、関係人口の受け入れ態勢の整備に注力している
→ 「起業志民プロジェクト」
無料のプログラミング講座で、シェアハウス提供。ハワイから移住実績
→ 「丸の内プラチナ大学」
→ 「さすらい合宿」(フリーランス向けプログラム)
→ 「副業受け入れプロジェクト」
大都市の副業人材×地域中小企業
8社の求人に対して、90名以上の応募があったが、課題として、企業側の採用スキルが伴わず、2名の採用にとどまった・・・
〇多田氏(NPO法人地域おこしの取組)
・自給自足を目指して活動開始
→ 自立までの足がかりとして地域おこし協力隊の制度を活用
・活動内容を発信していたところ、農文協からの原稿オファー
→ 書籍化『奇跡の集落』
・四季を通じた体験メニューやコンサルタントの経験を活かして地域でのワークショップ、企業研修を提供
〇松原氏(カヤックLiving、「SMOUT」の取組)
・オンラインでの移住スカウトサービス「SMOUT」では、地域と地域に関心がある人のマッチングプラットフォームを提供
・地域側から「こういう人に来てほしい」というプロジェクトを投稿
→ 地域に関心のあるユーザーとのオンラインチャットでやり取り、マッチング
・現在280市町村が登録し、ユーザー数は10000人を突破(2020年1月)
・関係人口の数値化も意識
→ 独自に「スコアネット関係人口」を数値化
・運営者は地域に直接行くことはなく、あくまでマッチングツールとしてのプラットフォームを提供
→ オンラインでのチャットや移住相談、地域おこし協力隊の説明会
・インターネットだけでは移住にはつなげられない
→ 移住につなげてくれるプレーヤーへのつなぎ役と考えている
・カスタマーサクセスは、地域を応援し、地域と地域に関心のある人の出会いをつくること
→ あくまで主役は地域の人で、その伴走者になる
〇副業と関係人口
(指出氏)
・副業から入りやすい地域が増えている
→ 関係人口と副業は相性がいい。可能性大
・地域の若い経営者は積極的に副業人材を活用してもい
いのではないか
〇関係案内所とは?
(指出氏)
・必ずしもハードとしての「場所」が必要なわけではないが、外から見ると場所があった方がシンプルにわかりやすい
・来る人が受け入れられて、活動できる体制、環境が整っていることが重要
・地域全体が関係案内所のように機能している事例もある
・外から来た人と地域の人が具体的な関係がつくれるように考えながら、場所をつくり変えていく
→ スケールしていく
→ 地域の雰囲気が変わっていく
・目的は関係案内のためのメディアを増やすこと
→ 場所があることは大事だが、場所をつくること自体は目的ではない
(多田氏)
・地域との関係をつなぐ役割
・地域の人との個人的なつながるができるような場
→ 一緒に何かする(飲む、つくるなど)
〇関係人口が増えると地域がどう変わるか?
(関氏)
・何か地域の力になりたいという関係人口に、受け入れる地域の側の体制が追い付いていない
・地域から過剰な期待や役割が課せられると、お互い不幸な結果になる
〇インターネットで関係をつくることについて
(松原氏)
・SMOUTの目的は、地域に入る1歩前の状態をつくること
→ リアルの関係案内所の人のところまでつなげていくこと
・地域に興味があるような人は既に移住してしまっている
・興味ある人を掘り起こすこと、それを地域とつなげることにSMOUTの意義がある
・小田切先生がいうところの「つながりサポート機能」のネット版
〇関係人口と移住の関係
(指出)
・関係人口は淡水。淡水には多様な生態系がある。
・地域のことが好き、関心が同じ人が増えることは地域にとっていいこと
・移住は決してゴールじゃないが、結果としての移住はOK
(関氏)
・地域に魅力があれば移住する人も増えるのではないか
・魅力ある地域づくりをすることが大事と思い、それに注力している
⇒ 地域づくりそのものに魅力を感じる人もいる
⇒ 「自分が関わっている感」「地域に自分の居場所がある感」がある=関わりしろが重要であるという視点が必要だと思っている
⇒ 至れり尽くせりの環境が既にできあがっていることを求めているわけではない。そういう人は東京に行くのでは?
(松原氏)
・移住を求めすぎると逆に逃げる
・常に地域の外にいて、地域を応援してくれる人の存在はありがたい
・都会にいるからこそできる関係人口の役割もある
(小田切氏)
・関係人口は多様であり、グラデーションがある。
・強要する必要はない。
・移住はゴールではなく、一つの結果ということ
〇関係人口を受け入れるために必要なこと(関係案内所以外で)
(指出)
・「うちを好きな人じゃないと来てほしくない」(地域側)
→ そもそも地域に興味ある人少ない。圧倒的に知らない人が多い
→ 入口時点で条件つくることは、一般的な「地域」に関心持つ人を遠ざける
・なんとなく地域に関心があるという人でもちゃんと受け入れられる人がいることが明暗をわける
・うまくいっている地域の共通点は、活動人口が多いこと
(山崎氏)
・地域の魅力を発信している人、地域で活動している人がいるという人の魅力はかなり大きなウエイトを占める
→ ポイントは、この人と友達になりたい、一緒に何かやりたいと思える人がどれだけいるか
→ 地域に来てくれた人とその人たちが出会うことができるか
・「移住してくれたら補助金がもらえる」制度はいかがなものか
→ お金目当ての人ばっかりが集まってくる
→ そういう人と友達になりたいか?
→ 志のある人は逆に来ない
(多田氏)
・移住者が優遇されすぎると、住民からの反感も起こる
〇活動人口と関係人口
(山崎氏)
・活動人口に厳密な定義があるわけではない。地域内にいる関係人口に近いイメージ
・コミュニティはもともと地域のコミュニティを意味した
→ 今の若い人はコミュニティに「地域」というイメージがない
・地域で区切る必要はなく、趣味や好きなことが一致する人たちのつながり
・ただし、自分たちが好きなことをするというだけだったら飽きてしまう
→ 「好きなこと+少しでも役に立つ、変化が起こる、地域の人から感謝される」レベルのことをすると満足度が高まる
・のろし好きな人が、月1回だけ山の上でのろし
→ 別の人が、他の複数個所で応答のろし
→ 山火事にならないよう、広場を掃除する
→ 月に1回広場がきれいになる
→ 地域の人から感謝
(指出)
・マルシェは「おしゃれな生存確認」
→ 生きるっていいな、あの人生きているな、笑える場所
→ 仲間が入っていける
(関)
・郷土芸能やっている
→ 一人だと撮影できない
→ 写真撮る仲間、発信する仲間ができると嬉しい
・自分でできることで関わっていく、関わりが生まれる
(多田氏)
・関わり方は2つの類型がある
① 仕事は関係ないけど、楽しいこと、好きなこと、盛り上がること
② 仕事そのもの。ソーシャルビジネス、コミュニティビジネス
・楽しくないと続かないし、お金が回らないと続かない
・リーダーの役割も必要だし、サポーターの役割も必要
(松原氏)
・自分の生き方を明確に持っている人の生きざまが人を惹きつける、人を惹きつけたところから関係が生まれる
・活動人口が強いところは関係をつくる力が強い
⇒ 関係をつくる力=魅力といえる
(小田切氏)
・活動人口=関係案内人といっていいのでは。
〇会場から意見
・コミュ強の人は楽しそう。コミュ障気味でも地域は好き。でも入っていくのは怖い
・SDGsの雰囲気と関係人口の関係とは?
→(指出氏)
知人の外国人が、関係人口を「コネクテッドマインドネス」と表現したことがある。
共感から生まれた行動というのは、まさにSDGsの考え方に共通するもの。
住めないけど、その地域や地域に住んでいる人が好きという感覚は、相手のことを思いやること、共感であり、持続的な未来をつくるために必要なことだと感じる。
〇全体まとめ
・関係案内所が必要
→ ごちゃまぜになる場所。地域を変える雰囲気をつくる
・活動人口が必要
→ 当事者意識。様々な人が寄り合い、楽しみながら活動する
・新しい潮流が生まれている
→ 副業、SDGs
→ 関係人口の概念が発展している~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
↑ ここまで
今回のシンポジウムはかなり勉強になりました。
今後の地域活性化ではおそらくこの「関係人口」というのがひとつ大きなポイントになってくるのではないでしょうか。
移住ばっかり追い求めて、関係人口づくりに目を向けない地域は確実に行きづまるでしょう。
また、山崎さんのいうとおり、お金で移住を促進するという考え方も、形上の数が増えるだけで決して地域の活動人口は増えないでしょうし。
この関係人口と活動人口のつながりというのもポイントかもしれませんね。
地域外の関係人口を増やすとともに、地域内では活動人口を増やすこと。
そしてこの両者がつながり、一緒に活動していくこと。
そのことが地域の総合的な活力をアップさせていくことにつながっていきそうです。
そのために必要なのが関係案内所の役割といえるでしょう。
今後、各地域でどんな取組が起こっていくか楽しみです!
私もときがわ町の「イチ関係人口」としての活動を続けていきたいと思います!