SAITAMA(埼玉)暮らしと本が最強なワケ

サイタマ産まれ、サイタマ育ちの共働き夫婦によるサイタマ暮らし。 ほとんど埼玉を出ません。 埼玉LOVE♡ 本もLOVE♡ なので書評も書いています。

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『地域引力を引き出す観光ブランドの教科書』まとめ ~ローカルビジネス・起業のためのエッセンス読書記録~

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これぞ観光関係者の必読書!! 


まさに「観光ブランドづくり」の決定版ですね。

最近読んだ観光系の本では断トツのナンバーワンです。



まず、文章が非常にわかりやすくて論理的、語り口もシンプル。

そして何より、内容がすばらしい!



著者が述べることは非常に単純明確かつ的確で、前書きの時点で付箋が大量になりました(汗)

最初から最後まで、学びがギッシリつまっています!

おかげで、かようにも長文になってしまいました・・・。



「観光振興」の真の目的とは何か?

お客さんが「行きたい!」と思う地域をつくるためには、どうすればいいのか?

こうした観光関係者の悩みをスパッと解決してくれます。



いや、本当に悩みが解決するのは、ここに書いてある内容を実践し、成果が出たときでしょう。

でも、この内容に沿ってやれば、きっと成果が出るのではないかと思わせてくれます。

それほどに力強く、明確な方向性を示してくれます。



とにかく地域を良くしたいと思っている観光関係者、行政の方にオススメしたいです!

いやホントに。

これ読んだら、行政関係者は自分のところのまちづくり計画をすべて見直したくなるんじゃないか・・・





↓ 内容紹介はこちらから
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◎本書のポイント


・観光のブランドをつくるためには、売り手視点の「誘客発想」から、買い手視点の「地域引力の向上」へ視点を転換することが必要

・観光施策の目的は、「地域が”元気”になること」「住む人、訪れる人が”幸せ”になること」
 →「観光客の”数”が増えること」ではない

「モノ観光」=「見る観光」はリピートや長期滞在につながりにくく、「コト観光」=「感じる観光」は、リピートにつながる

「明確なイメージ」が観光地のブランド力を向上させる最重要ポイント

・知名度はブランドではない。イメージが浮かぶのがブランドである

ブランドづくりは「らしさ」の追求である

・地域がブランドになるためには、一つでもいいので、他の地域にはない尖りをつくること
 → 小さな地域ほど尖りが大切

・ブランドづくりでは、「オンリー1」であるとは「その分野でナンバー1」であること

・「足し算思考」と「平等主義」ではブランドは生まれない
 → ブランドを生み出すために大切なのは、「引き算思考」と「メリハリ」

・地域引力を生み出すためには、顧客が認識する「強み」を把握し、それを徹底的に伸ばす発想が必要

「観光される国」よりも「観光する国」の方が、幸福度が高い

国民の観光の促進が、人々の幸福度の向上につながる

真の「観光立国」は、観光に来る人が多いだけではなく、「観光を楽しむ国民が多い国」である

・観光客の多さが、観光客の大きな不満要因になる

質の観光への転換には、滞在の促進」「リピートの促進」「地元消費の促進」への発想の転換が必要
 → 滞在客増加×リピート客増加=地元消費増加

持続可能な観光に必要なのは、「顧客」「地域資源」「お金」の3つの循環

「質の観光」→「循環する観光」→「持続可能な観光」

・質の観光のメインターゲットは、リピート志向、かつ、滞在志向の観光客

・リピート志向×滞在志向の観光客を引き付ける3つの要素は、「リラックス」「食・グルメ」「出会い・交流」






↓ ここから詳細なエッセンス紹介(注意:長いです。とても)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「⇒」は個人的な気づき、考え



◆引力ある地域づくりのための序章(「はじめに」より)


〇観光客視点の「地域引力の向上」


・観光客は「誘客」されてきたのではなく、それぞれの地域が持つ「何か」に引きつけられたからこそ、観光に来ている

・観光のブランドをつくるためには、売り手視点の「誘客発想」から、買い手視点の「地域引力の向上」へ視点を転換することが必要

・モノ(商品)のブランドづくりと異なり、観光のブランドづくりにおいては、とくに、「引力」を生み出すという発想が大切になる
 → なぜなら、地域は動かすことができないから

⇒ 考えてみると、当たり前のことだけど、すごく重要なこと



〇観光の目的は、観光客の増加か?


・地域が人々を引きつける力、すなわち「地域引力」を生み出すことこそが、「観光のブランドづくり」の発想


・地域引力があるから、観光客が引きつけられるのであり、その逆はあり得ない
 → 「地域引力」(原因)→「観光客」(結果)

・観光における数の追求は、遅かれ早かれ限界が来る
 → モノと違って地域は増やすことはできないし、大きくすることもできない

・観光施策の目的は、「地域が”元気”になること」「住む人、訪れる人が”幸せ”になること」
 →「観光客の”数”が増えること」ではない

⇒ ここを取り違えてしまうと、観光による弊害が起こる

⇒ オーバーツーリズムや過剰投資の問題、おもてなし疲れ・・・


・観光業だけでは地域引力は生まれない
 → 地域引力は、地域資源の掛け算である

・この10年で、訪日旅行者数は2000万人以上増加した
 → 「オーバーツーリズム」と呼ばれる過剰な観光客がもたらす弊害は現実化し、観光客数の増加が地域の豊かさや、地域の人々の幸福につながらないという声も聞くようになった






◆第1章 誘致・誘客からマーケティングへ



・「ぜひ、来てください」を誘致・セールスだとすると、「ぜひ、行きたい」がマーケティング
 → 「来てください」は売り手発想の想いであるが、「行きたい」は観光客の想い

・観光客と向かい合うのではなく、観光客と同じ方向をみて、観光客に「価値」ある提案をすること
 → 消費者が求めているのは、「観光サービスという”商品”」ではなく、「観光が、自分にもたらす”価値”」



〇消費者は、観光に何を求めているのか


・「全国消費者1000人調査」のランキング
 → 「癒やし・やすらぎ・リラックス」(273人)
   「非日常」(154人)
   「リフレッシュ・気分転換」(96人)
 → 「おもてなし」は1000人中1人もおらず、直接的な観光動機にはならない

・「モノ観光」=「見る観光」はリピートや長期滞在につながりにくく、「コト観光」=「感じる観光」はリピートにつながる





◆第2章 観光ブランドづくりとは何か



〇ブランドは論理を超える

・「長野県」には行きたくないが、長野県にある「軽井沢」には行きたい人がいる、「岐阜県」には行きたくないが、岐阜県にある「飛騨高山」には行きたい人がいるという論理的矛盾
 → ブランドは論理を超える
 → 地域としては都道府県の方が大きいが、ブランドで見ると特定の地域の方が大きい

・長野県、栃木県、岐阜県は「地名」、軽井沢、日光、飛騨高山は地名を超えた「ブランド」
 → インターネットで検索すると、「地名」では地図が、「ブランド」では地域ならではの写真が表示される





◆第3章 どうすれば、強いブランドが生まれるのか


・消費者が観光地を評価する9つの因子
 → 「明確なイメージ」「歴史文化」「リラックス」「ならではの食」「低コスト」「交流」「接客」「自然」「体験」

「明確なイメージ」が、観光地のブランド力を向上させる最重要ポイント

・次にブランド力に影響を与えているのは、「ならではの食」

・「低コスト」は地域のブランド力に有意な影響をもたらしていない

⇒ ビジネスでもまったく同じ。価格競争は消耗戦


・「自然」も地域のブランド力に有意な影響をもたらしていない
 → 「自然」はどの地域にもある。地域引力を生み出すためには、掛け算の発想が必要




◆第4章 イメージが浮かばなければ選ばれない


・地名を聞いて「イメージが浮かぶ」と「観光に行ってみたい」とは相関関係がある
 → イメージが浮かばなければ、選ばれない

・足し算するほど、イメージは薄くなる
 → 「特産品詰め合わせセット」や「幕ノ内弁当の地方版」はブランドにならない

・知名度はブランドではない
 → イメージが浮かぶ=ブランド





◆第5章 「ブランド」と「地名」は何が違うのか


・地域が「ブランド」か単なる「地名」かの判断方法

①地名を聞いたときに、独自のイメージが浮かぶか

②「そうだ、〇〇に行こう」に地名を入れて成り立つか

③「らしさ」を言語化できるか

→ ブランドづくりは「らしさ」の追求である






第6章 地域に「尖り」はあるか



・地域がブランドになるためには、一つでもいいので、他の地域にはない尖りをつくること
 → 尖る地域が増えることで、国全体として「多様性」が生まれる

・小さな地域ほど、尖りが大切
 → 「尖」は「大」のうえに「小」がある。小さな地域が大きな地域を超えるには尖りが欠かせない

 ⇒ まさしくビジネスでいうところのランチェスター戦略にほかならない


・ブランドづくりで、成功事例の「ヨコ展開」はあり得ない
 →「ヨコ展開」ができるのは真似されやすいということ

・尖るために「絞る」「強みを伸ばす」「磨く」

・ターゲット層が住む地域「ないもの」で地元に「あるもの」を探す






第7章 何かで、一番になろう



・ブランドでは、「オンリー1」であるとは「その分野でナンバー1」であること

・一番になるには、「引き算」「掛け算」すること





第8章 強いブランドには、「シンボル」がある


・独自のシンボルがあればイメージが浮かびやすくなる
 → イメージが浮かべば地域引力が生まれる

・地域のシンボルになるための条件は、「独自性があること」「イメージが浮かびやすいこと」

・ターゲット層に対して、シンボルのプロモーションを行い、シンボルを戦略的につくりあげる





第9章 「引き算」で、引力を生み出そう



・引き算をすることで、イメージが明確になる=「引力」は強くなる

・人の目に複数の景色が同時に入ってくることはない
 → 一つの景色を見せて、そこにいる自分をイメージできると行きたくなる

・「足し算思考」と「平等主義」ではブランドは生まれない
 → ブランドを生み出すために大切なのは、「引き算思考」と「メリハリ」





第10章 「食」がブランドを強くする


・海外が認識する日本の強みベスト3は、「culture」「people」「food」

・日本人が考える日本の強み「治安が良く安全で、おもてなしや親切の心があり、四季のある自然豊かな国」
 → 売り手が考える「強み」と買い手が認識する「強み」が一致していない

・地域引力を生み出すためには、顧客が認識する「強み」を把握し、それを徹底的に伸ばす発想が必要

・消費者に「食」でイメージを浮かべてもらうためには、「ならではの食」「名物料理」などが不可欠

・食を活用した地域のブランドづくりで大切なのは、「食べるモノ(食物)」ではなく、「食べるコト(食事)」である
 
⇒ 生産量を増やすのではなく、食事できる場所を増やす。商品を増やす。露出を増やす。





第11章 ブランドづくりの6ステップ


①組織づくり、ベクトル合わせ
・「ブランドとは何か」「ブランドづくりとは何か」「その目的は何か」をメンバーで共有すること

②地域の現状分析

③ブランド・アイデンティティの構築と共有
・「どのような地域になりたいか」
・ブランド・アイデンティティの3要素は、「価値性」「独自性」「共感性」
 → 「価値性」とは、売り手ではなく、顧客にとって価値があるか
・どの地域でもあてはまるアイデンティティでは、強いブランドは生まれない

④ブランド戦略の実行
・ブランド・アイデンティティとの統一性が必要
・一貫性を持って実行すること

⑤ブランド評価・モニタリング
・ブランドの「ありたい姿」と「現実」とのギャップを把握する

⑥磨き上げ





第12章 観光立国は「幸せな国」か


〇「観光大国」は幸せな国か?

・外国人旅行客数が多い「観光大国」の幸福度を見ると、観光大国ベスト10のうち、幸福度ランキングのベスト10に入っている国は一つもない


〇「観光立国」は幸せな国か?

・観光が国の基幹産業になっている「観光立国」の幸福度を見ると、観光立国ベスト10のうち、幸福度ランキングのベスト10に入っている国は一つもない


〇「観光する国」は幸せな国か?

・「観光する国」(旅行にお金を使う国)のベスト10のうち、幸福度ランキングのベスト10に入っている国が6か国もある


「観光される国」よりも「観光する国」の方が、幸福度が高い

・国民の観光の促進が、幸福度の向上につながる

真の「観光立国」は、観光に来る人が多いだけではなく、「観光を楽しむ国民が多い国」






第13章 「量の観光」から「質の観光」へ


〇量の観光

・「観光」+「混雑」「人混み」「渋滞」「人が多い」=不満

・観光客の多さが、観光客の大きな不満要因になる

・観光において、「量」と「質」は両立しにくい

・観光において、観光客はサービスの受け手でもあり、生産者でもある
 → 観光客自身が、観光地の品質を決める重要な役割を果たしている

・「量の観光」は、「ブランド力強化」→「観光客増加」→「オーバーツーリズム」→「地域イメージ低下」→「ブランド力低下」というパラドックスを生む



〇質の観光への転換

・滞在の促進
 → 数多くの観光客に来てもらうよりも、より長く滞在してくれる観光客に来てもらう

・リピートの促進
 → 数多くの観光客に来てもらうよりも、一人ひとりの観光客に繰り返し来てもらう

・地元消費の促進
 → 数多くの観光客に来てもらうよりも、地元で、一人ひとりの観光客により多く消費してもらう


・滞在客増加×リピート客増加=地元消費増加




⇒ 良質なお客さんは良質なお客さんを呼ぶ

⇒ 「数」を求めるとお客の質は下がり、「待つ」という不満が生じて良質なお客さんが逃げる






第14章 「質の観光」「持続可能な観光」をどう実現するか


・持続可能な観光のキーワードは3つの「循環」

①「顧客」の循環
・既存顧客のリピート
・小さな地域の方が、一人ひとりの顧客お「きずな」を強めやすいため、「顧客の循環」では有利になる

⇒ まさにランチェスター戦略。小さな企業は顧客密着型の強みをつくれる


②「地域資源」の循環
・リピート志向の観光客は、「地元食材を利用してほしい」というニーズを持っている
・「顧客の循環」と「地域資源の循環」は両立しやすい


③お金の循環
・お金が地元で循環することは、地域経済活性化の重要なポイントである
・地元消費を促進し、お金を地域内で循環させるためには、引力のある地元企業が増えることが欠かせない


・「質の観光」→「循環する観光」→「持続可能な観光」

・質の観光のメインターゲットは、リピート志向、かつ、滞在志向の観光客
 → サブターゲットは、リピート志向、もしくは、滞在志向のいずれかに該当する観光客



〇「リピート志向」の観光客の特性分析


「食」や「リラックス」を重視

「出会い・交流型の観光」「観光でリラックス」
 ⇔ 非リピート志向は「知識教養型観光」「価格の安い観光」「体験型観光」

③もう一度行ってみたいと思う条件は「食」と「リラックス系」



〇「滞在志向」の観光客の特性


「観光でリラックス」「食の健康」「接客」
 ⇔ 周遊志向は「体験型観光」「自然に触れる観光」「低価格」「知識教養型観光」

②長く滞在したいと思う条件は「リラックス系」と「食」



〇リピート志向×滞在志向の観光客を引き付ける3つの要素

①リラックス
②食・グルメ
③出会い・交流

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


いかがでしたでしょうか?

またまた超大作になってしまったのは、おおいに反省が多いですが、それだけ本書には学ぶところが多かったということです(と自分をフォローしてみる)。



観光業従事者の方や観光協会、行政の方々にとって、何かの参考になれば幸いです。





その「差別化」、伝わっていますか? ~競争から抜け出し、真の差別化を実現する方法~『ビジネスで一番、大切なこと』




【商品・サービスの差別化のために、過剰な競争に陥っている方にオススメ】



本書のテーマは「差別化」です。

著者のであるヤンミ・ムン氏は、ハーバード・ビジネススクール教授ですが、同時に一市民であり妻であり母であると語り、「一消費者」の立場から、ビジネス界で過剰に起こっている「差別化競争」に鋭く切り込んでいます。

一言でいえば、商品・サービスの生産者や提供者が意図している「差別化」は、消費者にとっては大した違いとして認識されていないということ。

つまり、商品・サービスの生産者・提供者と消費者の間の認識にズレがあるということですね。

それほどまでにわずかな違いしかないものが多すぎるというわけです。



確かに、何か流行っているものがあると、すぐに大手が目をつけて類似商品がいくつも出てくるというのはよくある話です。

スムージーしかり、布団掃除機しかり、EMS(Electrical Muscle Stimuletion)しかり・・・

あまりに些細な違いでしかないため、実は消費者が判断している基準は最終的に値段だったりします。

それが「ビジネスだ」といってしまえばそれまでですが、本当にそれでいいの?というお話です。



本書が提案するのは、真の差別化の意味です。

現代の過剰な、しかも消費者に伝わっていない「差別化競争」がビジネス界にとって、そして消費者にとってどんな価値があるのかを考えさせられます。

要は、何のために差別化するのかということ。


それでは本書の内容をまとめてみましょう。


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◆無意味になる「差別化」と真の差別化


・ビジネス成功の鍵は競争力であり、競争力とは競合他社といかに差別化できるかである。ところがその差が細かくなりすぎ、消費者がいぶかしく思う段階に達すると、差別化は無意味になる

・ポジショニングマップやランキング、市場調査などにおける尺度は、画一的な測定法をもたらす一方、比較する尺度ができれば、そこに群れが生じる
→ 自社の競争力を測るという前向きな努力が、結果的には均質化を促す

真の差別化は、偏りから生まれる



◆ビジネスパーソンと消費者の認識

・ビジネスパーソンと消費者との違いは、消費者は態度が一貫せず矛盾した感情を持つが、マーケターは揺るがない。消費者は製品の改良に気まぐれな態度を示すが、ビジネスパーソンの行動は型どおり


【ビジネスパーソン】
・製品の拡張の大半は、新しい機能が加わる「付加型」か、消費者の千差万別な好みにあわせた選択肢を増やす「増殖型」に向かう
→ コモディティ化と高コスト化を加速させる。気前よく価値提案をすればするほど、消費者は無関心になる。どの飛行機でもマイレージが得られ、どの洗剤でもシミが簡単にとれるなら、選り好みする必要はないからだ
・無意味な区別を巧みに差別化に見せかけているのが、ビジネスの現状
→ どうでもいいような違いを強調する才に長け、類似性を差別化と称する技を持つようになる

【消費者】
・消費はアイデンティティの代名詞であり、人々は何を消費したかを明らかにすることで、自分が何者かを示している
・ブランドロイヤリティは、ますます手に入りにくいものになっている
→ 市場が成熟したことによる2つの傾向
  ①競争が高じて過剰な活動が繰り広げられると、消費者の目に違いがわからなくなる
  ②そうなると、そのカテゴリーとの関係が、そのカテゴリー内のすべてのブランドとの関係になる(=特定のブランドに対する無関心)



◆競争から抜け出すための視点


〇3つのアイデア・ブランド

①リバース・ブランド
②ブレークアウェー・ブランド
③ホスタイル・ブランド


・期待と無関係なものを提供しながら、なおかつ期待に応え、これまでにない新たな現実を提供する

・市場の他の商品に比べて必ずしも優れているとは限らないが、差別化には成功している

・顧客と特別な関係を築き、群れから抜きんでている

→ 差別化を実現するためには、競争ではなく、競争からの完全な脱却が必要



◆世の流れの逆を行く「リバース・ブランド」 

・余分なものをそぎ落とすが、予想もしない形で贅沢なものに変える

・期待するものを取り上げ、期待してもいないものを提供する(惜しみなく与える)

・拡張という競争を拒んでいるのは、顧客を大切にしないからではない
→ 過度に成熟したカテゴリーには、満足しすぎている顧客(必要としていないのに、あふれるほどの便益を与えられている顧客)が大勢いる

・人は多すぎる状態に慣れてしまうと、当たり前のものがない状態を楽しむようになる

中核に新しい光を当てるために余計なものをそぎ落とすと、驚くべき純度を誇るようになる

【リバース・ブランドの例】
Google、IKEA



◆既存の分類を置き換える「ブレークアウェー・ブランド」

・消費者の分類プロセスに意図的に介入し、デフォルトに代わるカテゴリーを提示する(=再カテゴリー化)

・別の枠組みを提示し、変容を促す。ある商品に対して取りがちな態度を捨て、新しい条件でかかわりを持たせようとする

・期待どおりのものを提供しながら、まるで異なるものとして再定義し、概念的な枠組みを変えるよう迫る

カテゴリー内にいながら、なおかつ、そこにとどまっていない

・別の行動シナリオを自然にもたらすカテゴリー名を新たに提供する

・流れに逆らおうとせずに新しい流れへと導く。その流れは消費者に馴染みがあり、準備体操をしなくても飛び込める

【ブレークアウェー・ブランドの例】
AIBO(ソニー)、スウォッチ(ハイエック)、プルアップス(年長の子供向け下着〔キンバリークラーク〕)



◆好感度に背を向ける「ホスタイル・ブランド」


・顧客に媚びない

・古典的なマーケティングを実行せず、「アンチ・マーケット」の姿勢を貫く

・製品の欠点を率直に語り、消費者に対する障壁を築き、そのブランドに関わる意思の強さを確認する

→ 壁を越えられない他の消費者との間に大きな隔たりを生じさせる

見返りは、これ以上ないほど純粋で偏ったポジショニング、極端なまでのブランドの差別化

平凡なブランドが、私たちが隠れるのに一役買っているのに対し、ホスタイル・ブランドは個性を表現させる

良かれ悪しかれ、他と摩擦が生じるほどの激しい差別化を行っている。それが消費者にとっては、自身を差別化する機会となる

【ホスタイル・ブランドの例】
ミニクーパー、レッドブル



◆差別化に向けてアイデア・ブランドが語るもの

・3つのアイデア・ブランドは厳格な区別ではなく、思考の枠組み。共通点は、市場調査に基づいていないこと
→ 測れることだけでないもの、消費者の驚くものをもの、想像しなければならない

・差別化は手段ではなく、考え方


〇アイデア・ブランド3つの特徴

①希少性
・希少性は常に需要を呼び起こす

②大きな違い
・小さな違いではなく大きな違いを目指す
・違いは逸脱であり、置換

③人間的
・人間らしさ
・人間の行動に注目すること

⇒ これこそが本当の「顧客主義」ではないか
表面的なニーズを満たすのではなく、潜在的なニーズを掘り起こすことにつながる
提供したいと信じる価値を、消費者にぶつけ、社会をこういう世界に変えたいと訴えかけること
その純粋な輝きが、刺さる人には刺さる
刺さったときには、強力な顧客となる

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

個人的なことでいえば、最近、起業を考える上で自らのポジショニングを考えていますが、本書の差別化の考え方が役立ちそうですね。

重要なことは、自分が考える違いではなく、あくまでお客さんが認識できる違いでなくては意味がないということ。



また、特に印象に残ったのは、「リバース・ブランド」の考え方。

これまで新たな商品・サービスというと、組み合わせる、つまり何かを「足す・掛ける」ことばかりを考えていました。

でも、そぎ落とす、つまり「引き算」することによって、ピカピカの純粋な価値を強調できるということなんですね。

この視点はまちづくりを考える上でも非常に参考になりますね!

なんでもかんでも叶えようとするのではなく、ないものはない、でもこれならどこにも負けない。

そういった磨き上げられた宝のようなものが必要な時代かもしれませんね。



また、アイデア・ブランドの特徴の三つ目の「人間性」も印象的です。

うまくいえませんが、人間の複雑さを「楽しむ」、つまり遊び心のようなものがこれからの時代には求められるような気がしました。

民俗学しかり、キャンプしかり、田舎に住むことしかり。

そういう意味では、東京や大都市圏でない、地方の農村、中山間地にとっては大きなチャンスがあるのではないかと思います。

勉強になりました。



ちなみに、まったくの蛇足ですが、「差別化」が主なテーマになっている本にしては、タイトルが差別化されていない気がするのが残念といえば残念なところでしょうか・・・笑


ありがとうございます。


自分を商品としてマーケティングせよ ~自分ブランドを築くパーソナル・マーケティングの方法~(『パーソナル・マーケティング』)



組織ではなく「自分の価値」を考えることが重要度 : ★★★★★

「自分の価値」とは「誰のどんな役に立つのか」度 : ★★★★★



【自分の強みを把握し、自分ブランドを築きたいと思う人にオススメ】



現在のような個人の時代には、会社や学歴といった組織のブランドに頼るのではなく、個人としてのスキルを磨き、自分ならではの強みを明確にすることで、自分自身を世の中にアピールしていくことが必要だといいます。

そのために自分自身を客観的に考える際に有効なフレームが、著者のいう「パーソナル・マーケティング」です。

「パーソナル・マーケティング」とは、自分を商品としてとらえ、「客観的に見た自分の強みは何か?」「それは誰の役に立つのか?」を判断し、適切な行動やアウトプットをすることで、自分の市場価値を高めることをいいます。

そのことによって、厳しい「個人サバイバルの時代」をチャンスに変えることができます。

本書では、そんなパーソナル・マーケティングのノウハウについて紹介されています。


著者は、本田直之氏。

自ら多数の著書を出版するだけでなく、パーソナル・マーケティングを活用して、「無名の個人」によるビジネス書のプロデュースも数多く手がけた実績を持ちます。


これからの時代、個人がその他大勢に埋没せず、生き抜いていくためにはどうすればいいか。

本書からそのヒントを探ります。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


◆パーソナル・マーケティングがうまくいっている人、うまくいっていない人

〇うまくいっている人の特徴

・自分の進みたい方向が分かっている
・現時点で自分に何が足りないかを理解し、そのギャップを埋める努力をしている
・自分ならではの独自性をつねに意識している
周囲への貢献をつねに考えている


〇うまくいっていない人の特徴

・自分の言いたいことばかり言う
・インプットが少ない=アウトプットの質が下がる
・他の人と同じでいいと考える
・突き詰めて考えない
・思いつきで脈絡のない言動をする
・中身に釣り合わないブランドをつくる



◆パーソナル・マーケティングの基本

〇パーソナル・マーケティングのポイント

・自分の強みをはっきりさせる
・「それは誰の役に立つのか」を徹底的に考える
・さまざまな要素を体系立てて組み立てる


〇パーソナル・マーケティングのフレーム

①「プロフィール」と「スキル」
②①から「ニーズ」「ロジック」「オリジナリティ」を考える
③②から「コンテンツ」をつくり、「プロモーション」する



◆自分の強みを洗い出す

・「自分は将来どうなりたいか」というイメージを持つ
・そこに至るにはどうすればいいかという観点から、自分の経歴、得意なこと、興味のあることを整理する

→ そのために、何を、どう努力すればいいかがはっきりする



◆ターゲットを明確にする

・ターゲッティングとは、「誰の役に立つのか」を徹底的に考えること
・相手はあなたに「何を求めているのか」(=ニーズ)を考える



◆体系化する

・成功体験をリストアップし、再現性のあるスキルに変える
・シーズとニーズをマッチさせる


◆自分ならではの独自性をつくる

・差別化する
・キャリアをミックスすることで独自のマーケットをつくる
→ A×B×Cでマルチタレント化する



◆個人ブランドをマネジメントする

・ブランドが広く認知され、クレディビリティ(信用)が生まれれば、売り込みをしなくてもよくなる



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


以上がパーソナル・マーケティングのポイントで、私が重要だと感じた部分です。


また、本書では、それぞれの小項目の最後に、「ワーク」が設けてあり、これも非常に参考になりました!

最後にいくつか試してみたいと思ったものをご紹介したいと思います。



【ワーク9】自分にタグを貼る
・自分の興味のあることや得意なこと、気になることを、思いつくまま書き出して、タグリストをつくりましょう

【ワーク14】「人に教えられること」を持っている
・あなたが人に教えられることを20個リストアップしましょう

【ワーク18】「相手はあなたに何を求めているか?」を考える
・あなたが考えている相手はどんなニーズを持っているかを考えて書き出してみましょう

【ワーク21】成功体験をリストアップする
・あなたのこれまでの経験の中で、うまくいったこと、成果が上がったこと、人に教えられることを、100個書き出してみましょう

【ワーク22】「たまたま」の成功を「何回でもできる」スキルに変える
・「なぜうまくいったのか?」「どうやったらうまくいったのか?」を書き出しましょう

【ワーク28】自分のキャッチフレーズを持つ
・あなたのコンテンツを表現するキャッチフレーズを100個書き出しましょう



さっそくやってみることにします。

ありがとうございました!



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