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先日紹介した上の写真の本『人口減少×デザイン』で、非常に興味深い分析がありました。

それは、全国の自治体の人口減少パターンを5つに分類するというものです。

「人口が減っている」という事実ではなく、「どうして人口が減少しているのか」の理由に注目して
、特定の地域における人口減少の要因を特定することでより適切な対策がとれるのではないか。

そう思ったわけです。



元の上司の受け売りですが、私が気に入っている言葉に


正確に問題が把握できなければ、適切な対策を講じることはできない。
対策が適切でなければ、正しい効果を生むことはできない。



というものがありますが、まさにこのロジックですね。

問題解決のためには、まず正確に問題を把握することが必要不可欠になります。




ということで、手始めに我が愛する埼玉県のうち、まずは日ごろお世話になっている坂戸市を事例に取り上げ、人口減少パターンを分類してみました。

分類に使う指標は、次の3つです。



【指標①】20~44歳女性比率
 → 若年女性が地域の人口に占める割合

【指標②】20~44歳女性既婚率

 → 若年女性の結婚している割合

【指標③】合計特殊出生率
 → その地域の女性1人あたりが生む子どもの数

(『人口減少×デザイン』より)




『人口減少×デザイン』では、【指標①】と【指標②】は2010年の国勢調査のデータを使っていますが、現在は2015年のデータが公開されていますので、最新の数字を使うことにしました。

また、本書ではおそらくはもっと細かく基準を設けているとは思いますが、分類しやすくするために、ここでは基準とする数値を以下のように設定して機械的に分類してみました。


【指標①】15.0%より高いか低いか


【指標②】55.0%より高いか低いか

【指標③】1.50より高いか低いか





結果は以下のようになりました。


〇埼玉県坂戸市の人口減少パターン



【指標①】20~44歳女性比率・・・高い 16.7%

【指標②】20~44歳女性既婚率・・・低い 52.0%

【指標③】合計特殊出生率・・・低い 1.27


→ グループC「独身女性たくさん型」






とはいうものの、【指標3】については、埼玉県内の自治体の合計特殊出生率は秩父市、戸田市、滑川町以外はすべて1.5を下回っていて、合計特殊出生率の低さは県内全体の傾向といえそうですね。

残る2つの指標にはバラツキがあるので、これら如何によって分類できそうです。




・・・気になったので、ついでに埼玉県内の市町村をすべて分類してみました。



◆埼玉県内の市町村の人口減少パターンを分類してみた



〇グループA「若者さよなら型」の自治体

【指標①】若年女性比率:低い
【指標②】既婚率:高い
【指標③】合計特殊出生率:高い

・該当する市町村
 秩父市



〇グループB「産み控え型」

【指標①】若年女性比率:高い
【指標②】既婚率:高い
【指標③】合計特殊出生率:低い

・該当する市町村
 さいたま市、川口市、志木市、和光市、新座市、八潮市、三郷市、吉川市、ふじみ野市、伊奈町、




グループC「独身女性たくさん型」

【指標①】若年女性比率:高い
【指標②】既婚率:低い
【指標③】合計特殊出生率:低い

・該当する市町村
 川越市、熊谷市、所沢市、東松山市、春日部市、狭山市、上尾市、草加市、越谷市、蕨市、入間市、朝霞市、桶川市、久喜市、富士見市、蓮田市、坂戸市、鶴ヶ島市、白岡市、毛呂山町、上里町、宮代町、



〇グループD「いない産まない型」

【指標①】若年女性比率:低い
【指標②】既婚率:低い
【指標③】合計特殊出生率:低い

・該当する市町村
 行田市、飯能市、加須市、本庄市、羽生市、鴻巣市、深谷市、北本市、幸手市、日高市、三芳町、越生町、嵐山町、小川町、川島町、吉見町、鳩山町、ときがわ町、横瀬町、皆野町、長瀞町、小鹿野町、東秩父村、美里町、神川町、寄居町、杉戸町、松伏町




〇グループE「スローペース型

【指標①】若年女性比率:高い
【指標②】既婚率:高い
【指標③】合計特殊出生率:高い


・該当する自治体
 戸田市、滑川町


このような結果になりました。

なお、ちなみに埼玉県全体でいうとグループC「独身女性たくさん型」でした。


詳細な分析結果は以下のとおりです。



埼玉県人口減少パターン




やってみてわかったことは、


・すべての指標の数値が低い「いない産まない型」が最も多く、町村部の多くが含まれる

・「独身女性たくさん型」は2番目に多く、市部が多い

・すべての指標が高い「スローペース型」は、戸田市と滑川町の2自治体しかない

ということ。




今後は、このような市町村ごとの人口減少要因を踏まえた対策を講じることが必要になるでしょう。

とはいえ、結婚する・しない、子どもを産む・産まないの問題は、一人ひとり、または夫婦それぞれに選択権があるということが前提になりますので、押しつけや義務にすることはしてはいけません。

また、子どもを望んでいても何らかの理由で子どもを産めないということもあるでしょう。

ですので、ここで述べていることは、あくまで個人や夫婦が選択することであるという前提に立ちつつも、個人・夫婦が望んだ選択肢を地域社会や職場が受け止め、尊重し、希望を叶えられるような環境を整えるようにすることに主眼があります。




また、「スローペース型」の戸田市と滑川町は、ともに子育てや教育に力を入れている自治体であることも注目すべき点ですね。

やはり人口減少を緩やかにするためには、これらがキーワードになってくるといえそうです。




さらにいうと、日本全体が人口減少に向かっている中で、今後、劇的に人口が増加することは考えづらいでしょう。

そうなると、移住・定住政策のような人口のパイを奪い合うのでは近い将来、行きづまることは確実です。

そんな中で今、私が注目しているのは「関係人口」という概念です。

関係人口とは、「住んではいないけれど、その地域のファンとして、仲間としてその地域で活躍してくれる人たち」のことです。

ということは、人口は増やせないかもしれないけれど、関係人口は増やすことができるのです。

関係人口を増やすことは、地域の魅力を高めることにつながり、地域の活力の維持・向上に結びついていくはずです。

これを合言葉に、今後も関係人口の研究と地域での実践を続けていきます!