【商品・サービスの差別化のために、過剰な競争に陥っている方にオススメ】



本書のテーマは「差別化」です。

著者のであるヤンミ・ムン氏は、ハーバード・ビジネススクール教授ですが、同時に一市民であり妻であり母であると語り、「一消費者」の立場から、ビジネス界で過剰に起こっている「差別化競争」に鋭く切り込んでいます。

一言でいえば、商品・サービスの生産者や提供者が意図している「差別化」は、消費者にとっては大した違いとして認識されていないということ。

つまり、商品・サービスの生産者・提供者と消費者の間の認識にズレがあるということですね。

それほどまでにわずかな違いしかないものが多すぎるというわけです。



確かに、何か流行っているものがあると、すぐに大手が目をつけて類似商品がいくつも出てくるというのはよくある話です。

スムージーしかり、布団掃除機しかり、EMS(Electrical Muscle Stimuletion)しかり・・・

あまりに些細な違いでしかないため、実は消費者が判断している基準は最終的に値段だったりします。

それが「ビジネスだ」といってしまえばそれまでですが、本当にそれでいいの?というお話です。



本書が提案するのは、真の差別化の意味です。

現代の過剰な、しかも消費者に伝わっていない「差別化競争」がビジネス界にとって、そして消費者にとってどんな価値があるのかを考えさせられます。

要は、何のために差別化するのかということ。


それでは本書の内容をまとめてみましょう。


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◆無意味になる「差別化」と真の差別化


・ビジネス成功の鍵は競争力であり、競争力とは競合他社といかに差別化できるかである。ところがその差が細かくなりすぎ、消費者がいぶかしく思う段階に達すると、差別化は無意味になる

・ポジショニングマップやランキング、市場調査などにおける尺度は、画一的な測定法をもたらす一方、比較する尺度ができれば、そこに群れが生じる
→ 自社の競争力を測るという前向きな努力が、結果的には均質化を促す

真の差別化は、偏りから生まれる



◆ビジネスパーソンと消費者の認識

・ビジネスパーソンと消費者との違いは、消費者は態度が一貫せず矛盾した感情を持つが、マーケターは揺るがない。消費者は製品の改良に気まぐれな態度を示すが、ビジネスパーソンの行動は型どおり


【ビジネスパーソン】
・製品の拡張の大半は、新しい機能が加わる「付加型」か、消費者の千差万別な好みにあわせた選択肢を増やす「増殖型」に向かう
→ コモディティ化と高コスト化を加速させる。気前よく価値提案をすればするほど、消費者は無関心になる。どの飛行機でもマイレージが得られ、どの洗剤でもシミが簡単にとれるなら、選り好みする必要はないからだ
・無意味な区別を巧みに差別化に見せかけているのが、ビジネスの現状
→ どうでもいいような違いを強調する才に長け、類似性を差別化と称する技を持つようになる

【消費者】
・消費はアイデンティティの代名詞であり、人々は何を消費したかを明らかにすることで、自分が何者かを示している
・ブランドロイヤリティは、ますます手に入りにくいものになっている
→ 市場が成熟したことによる2つの傾向
  ①競争が高じて過剰な活動が繰り広げられると、消費者の目に違いがわからなくなる
  ②そうなると、そのカテゴリーとの関係が、そのカテゴリー内のすべてのブランドとの関係になる(=特定のブランドに対する無関心)



◆競争から抜け出すための視点


〇3つのアイデア・ブランド

①リバース・ブランド
②ブレークアウェー・ブランド
③ホスタイル・ブランド


・期待と無関係なものを提供しながら、なおかつ期待に応え、これまでにない新たな現実を提供する

・市場の他の商品に比べて必ずしも優れているとは限らないが、差別化には成功している

・顧客と特別な関係を築き、群れから抜きんでている

→ 差別化を実現するためには、競争ではなく、競争からの完全な脱却が必要



◆世の流れの逆を行く「リバース・ブランド」 

・余分なものをそぎ落とすが、予想もしない形で贅沢なものに変える

・期待するものを取り上げ、期待してもいないものを提供する(惜しみなく与える)

・拡張という競争を拒んでいるのは、顧客を大切にしないからではない
→ 過度に成熟したカテゴリーには、満足しすぎている顧客(必要としていないのに、あふれるほどの便益を与えられている顧客)が大勢いる

・人は多すぎる状態に慣れてしまうと、当たり前のものがない状態を楽しむようになる

中核に新しい光を当てるために余計なものをそぎ落とすと、驚くべき純度を誇るようになる

【リバース・ブランドの例】
Google、IKEA



◆既存の分類を置き換える「ブレークアウェー・ブランド」

・消費者の分類プロセスに意図的に介入し、デフォルトに代わるカテゴリーを提示する(=再カテゴリー化)

・別の枠組みを提示し、変容を促す。ある商品に対して取りがちな態度を捨て、新しい条件でかかわりを持たせようとする

・期待どおりのものを提供しながら、まるで異なるものとして再定義し、概念的な枠組みを変えるよう迫る

カテゴリー内にいながら、なおかつ、そこにとどまっていない

・別の行動シナリオを自然にもたらすカテゴリー名を新たに提供する

・流れに逆らおうとせずに新しい流れへと導く。その流れは消費者に馴染みがあり、準備体操をしなくても飛び込める

【ブレークアウェー・ブランドの例】
AIBO(ソニー)、スウォッチ(ハイエック)、プルアップス(年長の子供向け下着〔キンバリークラーク〕)



◆好感度に背を向ける「ホスタイル・ブランド」


・顧客に媚びない

・古典的なマーケティングを実行せず、「アンチ・マーケット」の姿勢を貫く

・製品の欠点を率直に語り、消費者に対する障壁を築き、そのブランドに関わる意思の強さを確認する

→ 壁を越えられない他の消費者との間に大きな隔たりを生じさせる

見返りは、これ以上ないほど純粋で偏ったポジショニング、極端なまでのブランドの差別化

平凡なブランドが、私たちが隠れるのに一役買っているのに対し、ホスタイル・ブランドは個性を表現させる

良かれ悪しかれ、他と摩擦が生じるほどの激しい差別化を行っている。それが消費者にとっては、自身を差別化する機会となる

【ホスタイル・ブランドの例】
ミニクーパー、レッドブル



◆差別化に向けてアイデア・ブランドが語るもの

・3つのアイデア・ブランドは厳格な区別ではなく、思考の枠組み。共通点は、市場調査に基づいていないこと
→ 測れることだけでないもの、消費者の驚くものをもの、想像しなければならない

・差別化は手段ではなく、考え方


〇アイデア・ブランド3つの特徴

①希少性
・希少性は常に需要を呼び起こす

②大きな違い
・小さな違いではなく大きな違いを目指す
・違いは逸脱であり、置換

③人間的
・人間らしさ
・人間の行動に注目すること

⇒ これこそが本当の「顧客主義」ではないか
表面的なニーズを満たすのではなく、潜在的なニーズを掘り起こすことにつながる
提供したいと信じる価値を、消費者にぶつけ、社会をこういう世界に変えたいと訴えかけること
その純粋な輝きが、刺さる人には刺さる
刺さったときには、強力な顧客となる

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個人的なことでいえば、最近、起業を考える上で自らのポジショニングを考えていますが、本書の差別化の考え方が役立ちそうですね。

重要なことは、自分が考える違いではなく、あくまでお客さんが認識できる違いでなくては意味がないということ。



また、特に印象に残ったのは、「リバース・ブランド」の考え方。

これまで新たな商品・サービスというと、組み合わせる、つまり何かを「足す・掛ける」ことばかりを考えていました。

でも、そぎ落とす、つまり「引き算」することによって、ピカピカの純粋な価値を強調できるということなんですね。

この視点はまちづくりを考える上でも非常に参考になりますね!

なんでもかんでも叶えようとするのではなく、ないものはない、でもこれならどこにも負けない。

そういった磨き上げられた宝のようなものが必要な時代かもしれませんね。



また、アイデア・ブランドの特徴の三つ目の「人間性」も印象的です。

うまくいえませんが、人間の複雑さを「楽しむ」、つまり遊び心のようなものがこれからの時代には求められるような気がしました。

民俗学しかり、キャンプしかり、田舎に住むことしかり。

そういう意味では、東京や大都市圏でない、地方の農村、中山間地にとっては大きなチャンスがあるのではないかと思います。

勉強になりました。



ちなみに、まったくの蛇足ですが、「差別化」が主なテーマになっている本にしては、タイトルが差別化されていない気がするのが残念といえば残念なところでしょうか・・・笑


ありがとうございます。