【つい子どもを必要以上に叱ったり、褒めたりしてしまう悩める親御さんにオススメ】
まず興味をひかれたのはそのタイトル。
「育自の教科書」とはよくいったものですね。
「親育て」というフレーズも、「まさに我が意を得たり!」という感じでした。
本書は、そのタイトルにあるとおり、アドラー心理学を取り入れた「育児本」であり、同時に「育自本」でもあります。
その根底にある考え方は、「自立した子どもを育てるためには、まず親が自立しなければならない」ということ、そして親として成長し、子どもを伸ばすためにそれぞれ「勇気づけ」が大事ということです。
そのために重要となるアドラー心理学の幸せの3条件を理解し、生活に取り入れるための考え方を学ぶことができます。
アドラー心理学を使った育児本はよく目にしますが、対象を子どもではなく親に置いている点が特徴です。
アドラー心理学の幸せの3条件とは
・ありのままの自分を認めることができる(自己受容)
・周囲の他者を信頼する(他者信頼)
・自己を犠牲にすることなく、他者に貢献する(他者貢献)
こと。
これらを身につけ、共同体の中で所属感、信頼感、貢献感の確かさを求めて行動し、共同体感覚を発揮することで、幸せを手に入れることができるといいます。
そう、生きることの究極の目標は、「幸せになること」なんですよね。
わかっているようで、日常ではついそのことを忘れてしまちがちです。
そして、このことは育児の究極の目標ともいえるでしょう。
著者は、熊野英一氏。
これまで8万人を超える保育実績を有する保育サービス会社、株式会社子育て支援の代表取締役であり、「アドラー芸人」を名乗っています。
また、本書から始まる「アドラー子育て・親育て」シリーズと連動したウェブサイトも開設していて、自分の興味のある内容をさらに深く学べるような仕組みをつくっているのがユニークですね。
『嫌われる勇気』で日本で一気に有名になったアドラー心理学ですが、「育児」という具体的な切り口を与えると非常に有効な手段であることがわかります。
また、あるテーマを設定して、アドラー心理学をツールとして使うと、アドラー心理学のこともよく理解できる気がしました。
それでは本書の内容を整理してみます。
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◆子どもの「勇気づけ」と「勇気くじき」
〇「勇気づけ」
・子どもが自分自身で自分の課題・困難を克服できるようなチカラを与える関わり方
〇「勇気くじき」
・子どもの自信とやる気をなくさせるような言動
・子育ての本質は、子どもに勇気づけのコミュニケーションを行い、子どもが自立した大人に成長するのを手助けする、導くこと
・「自立」とは、保護者の保護から精神的に独立して、自分のことを信頼しながら、社会(他者)との適切で建設的な関係を構築して生きていくこと
→ そのために一番効果的なのは、幸せの3条件を指針として、親自身が自立した大人の見本を見せ、子どもに関わること
◆子どもの自立のためには親の「自己受容」が大前提
・子どもが自立する環境をつくること、子どもの自立の援助・サポート(=勇気づけ)
・そのためには、子どもを「信用」する(条件付きで信じる)のではなく、「信頼」する(無条件で信じる)こと
・自分自身を信じられないと他者を無条件で信じることはできない
→ 自分自身を信頼する
= ありのままの自分(不完全な自分)を受け入れる、認める(自己受容)
⇒ 自立とは、自分を勇気づけ、同時に他者も勇気づけることのできる力を身につけて、社会に貢献しようとする価値観を持っている状態
◆「育児=育自」に役立つアドラー理論
〇自己決定性
・人間は、自分の行動を自分で決められる
〇認知論
・人間は、自分流の主観的な意味づけを通してものごとを把握する
・性格(ライフスタイル)は変えられる
→ 自分自身の現状をどうみなしているか(自己概念)、周囲の人・人生の現状をどう見ているか(世界像)、自分がどうありたいか・周囲の人からどう扱ってほしいか(自己理想)
〇人生のウソ
・目の前の困難や課題は、自分の責任で対処すべき・できるもの
・「人生のウソ」とは、自分ではコントロールできない外部の環境や周囲の人に責任を転嫁して「だから、できなくても仕方ない」と言い訳すること
・「ありのままの自分を認める」=他者比較に基づく言い訳に逃げることから卒業すること
◆「正の注目」で勇気づける~ほめらない・叱らない~
〇「正の注目」
・感謝を伝える、存在を認め注目していることを伝える、励ます
・ヨイ出し(⇔ダメ出し)
・ついダメなことに注目してしまう(負の注目)
〇子どもはありのままを親に受け入れられたい
・何ができようができまいが、自分の価値は変わらない、親の愛は変わらない、ありのあまを親に受け入れてもらえるかどうかを確認したい
〇「ほめる」「しかる」ばかりだと・・・
・自分が必ずしも心の底からやりたいことではなく、親の評価を気にして、親が喜ぶことを一生懸命にするようになる
・ほめないとやらなくなる
・失敗を恐れる
・指示待ち人間になる
〇正の注目による勇気づけ
・感謝を表明する
・ヨイ出しをする
・聴き上手に徹して共感を示す
・相手の進捗、成長を認める
・失敗を許容する
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アドラー心理学の言葉はグサグサと心に突き刺さります。
思い当たるところがてんこもりです・・・。
ついつい自分の子どもをかわいいと思うばかりに、すぐ「すごい!」「上手!」などと褒めてしまいたくなりますよね。
これってできたことを褒めているのであって、「結果オンリー」ということです。
それだと「ほめてもらうために」うまくやろうとする→失敗を恐れるようになるということなんですね。
ただ、子どもが頑張ってできたのに、褒めてあげられないというのも親としては苦しいところです。
そこで私は最近意識して、「よく最後まで頑張ったね!」などと、結果ではなく頑張ったプロセスそのものに注目することにしています。
(それも褒めていることになるので、完全には勇気づけとイコールではないかもですが・・・)
あとはやはり幸せの3条件、「自己受容」「他者信頼」「他者貢献」でしょうか。
その中でも「自己受容」は現代に最も必要なことだと思います。
そして私自身にとっても。
アドラーの教えを胸に刻み込みます!
ありがとうございます。